「令ちゃん!お土産何がいい?」
2年生は明日から修学旅行だ。子供のようにはしゃぐ由乃を見るたびに、私の胸は痛む。
「由乃が買ってくれた物なら何でもいいよ。」
沈黙を嫌っただけの、心の無い言葉。
タイミングを考えているだけの時間。


今日の昼休みの事を知ってるのだろうか。
今日だけではない。昨日も。その前も。全て知ってるのだろうか。


「あのさ、由乃・・・」
「なに?令ちゃん?」
振り返った由乃は私の目をじっと見る。
「なに?令・・・」
言葉をさえぎるためだけのキス。
口から出かかった言葉は、すぐに胸の中にしまった。
昔だったら、嘘なんてすぐにバレたのに。
いつのまにか私は嘘をつくのが上手くなっていた。

「愛してる。令ちゃん。」
全てをお見通しのような由乃の言葉。
私はもう一度、言葉をさえぎるキスをする。
「愛してる・・・令ちゃん・・・」


いつから祥子とこんな関係になったのだろう。
昼休みの薔薇の館。
食事もそこそこに、無言で祥子の肩を抱き寄せる。
「愛してる。」
妹にも言った事の無い言葉を耳元で囁き、むさぼるように求め合った。毎日。毎週。
「愛してる・・・祥子・・・」


「令ちゃん?」
言葉の無い空間が、新たな不安を生む。
耐え切れずに口を開きかける。
が、言いかけて、また言葉を胸にしまってしまった。
いつになったら、伝えなければならない言葉は私の口からでるのだろう?

私は由乃の髪を優しくなで、そして顔を近づけた。
答えのない沈黙がまたうまれる。
「好きだよ。由乃。」
でも、やはり出てくる言葉はその場しのぎの言葉だけ。
本当に伝えないといけない言葉は出てこない。


どれだけ時が経てば、私は正直になれるのだろうか。
やがて冷たい空気が胸をしめつけてきた。
繰り返されるキスは、不思議なほど悲しかった。


先ほどまで熱い吐息で充満していた部屋。
由乃はベッドの上で脱力して眠る、いや、眠ったフリをしている私をじっと見つめていた。
やがて、乱れた服を整えて、一言つぶやいて部屋のドアを開けた。

「ウソツキ」

聞こえないフリをした。
小さな、かすれるような声だったけども
声の大きさに反比例して私の心に激しく突き刺さった。
ドアが閉められ、階段を降りていく音がする。自分の部屋に帰るのだろう。


私のことわかっていたんだ。ずっと前から。
失った物の大きさに気づいたけども、あの頃の二人にはもう戻れない。

やがて朝になった。
朝なんて来なければいいのに。